極道社会は本来、博徒と香具師の2つのルーツを持つ。
定住型の博徒に対し、薬草の神・神農皇帝を始祖とする香具師は日本各地を旅する放浪者であった。
この荒ぶる男社会において密教を信仰する者、神仏の刺青を持つ者がいるなど、
冷徹なリアリズムと精神世界という真逆の価値観が並存する奇妙な側面はよく知られている。

もし薬師である香具師たちが、人智を超えた地を旅する秘術の使い手であるとしたら…。

本作はその"呪術的極道"という架空の極道社会を描くものである。

本作品は"レトロフィルム"をテーマに、フィルム傷や編集のコマ残しなど、ジャンクなイメージに仕上げられている。
全てがきれいに仕上げられるデジタル全盛の時代だからこそアンチ・デジタルのベクトルにこだわり、
監督の映画制作の原点となる70~80年代のB級作品や8ミリ映画テイストを持った手作り感覚溢れる映画へのオマージュを目指したものである。
この"レトロなフィルム傷"たちに豊かになっていく時代に静かに姿を消していった登場人物たちへの憧憬と惜別の思いが重ねられ、
本作品の世界観を支える大切な要素となっている。

正木蒼二

ある目的を胸に秘め潜入した謎の森で、命がけの死闘を潜り抜ける主人公サジキ・ジントウを演じる。

東映「ブルースワット」('94)でデビュー。その主人公らしからぬアンチヒーローぶりで、特撮番組ながら異例の高評価を得る。 その後、「今日から俺は!!」('94)、「STRAIGHT TO HEAVEN ~天国へまっしぐら~('08/柏原寛司監督)、多重人格探偵サイコ('05)など、映画・TV、舞台と活躍の場を広げ、クールなルックスとは対照的に時に熱く、またナイーブな内面を持ったキャラクターを演じ、現在に至るまで強い印象を残す俳優として活動している。

彼自身も情熱的な人物であり、感性豊かなアーティストでもある。 写真家としても優しく透明感溢れる感受性を表現する作品を撮影し、俳優とは違う驚くような一面を垣間見ることが出来る。 また近年、Webショップ"Triple-S"を立ち上げファッション業界へも進出するなど、その才能の広がりはとどまるところを知らない。

"カッコいいだけじゃない男"それが正木蒼二である。

[出演作] 真・女神転生デビルサマナー('97)、超新星グランセイザー('03)、練鑑ブラザーズ ゲッタマネー!('01)、Rodeo Drive -ロデオドライブ('03) キヲクドロボウ('07)、STRAIGHT TO HEAVEN ~天国へまっしぐら~('08)

高東楓

主人公を助ける相棒という重要な役どころながら覆面姿のため、一切顔が出ないという 極めて特異なキャラクター、クゼ・サブロウタを演じる。

ブルース・リーをこよなく愛し、彼の生み出した截拳道に魅了されたアクション俳優の 一人。その実力は数々のアクション映画で発揮され、また殺陣師としても多くの現場 で擬闘指導を行う。

アクションのみならず役者としての優れた直感力を披露し、サイコ な役どころを演じるなど多才な面を見せる。
それらは決して思い付きのものではなく、 経験から綿密に導き出されたものであり、演出への理解にも優れたものがある。

本作 ラストカットで見る者を思わずにやりとさせる演技は、彼のアイデアを元にしている。 本作でも術に長けた香具師であるものの、コミカルでひょうきんな道化者・サブロウタを 表情が見せられないという厳しい条件下にもかかわらず、身体を使って見事に演じており、 アクション俳優ならではの本領発揮といえる。

大和克巳

サジキを冷徹に結界の罠へと追い込む敵役・縣(あがた)を演じる。

端正なルックスでありながら、胡散臭さ満点の演技を繰り広げるトリックスターであり、「稀代の怪優」(監督談)である。 まるで漫画からそのまま抜け出てきたような存在であり、爽やかな振りまく彼の笑みは全く油断がならない。意表をつくその存在感は映画作品の中だけとは限らず、 「電車内で何の前触れもなく駅員姿の彼がデカデカと写っているポスターを発見した時が一番衝撃的」(監督)だったそうで、あまりの怪しさに最後までそれが鉄道会社の広報PRだと気づかなかったという。

もちろん長年培われた確かな演技力には定評があり、どの作品においても彼への高い評価の声が上がる。 本作品では、主人公を追い詰めるストイックな敵役を演じるためクールで落ち着いた演技となっているが、本来の彼の姿を見るにはぜひ「ベクター7」など他の出演作品をチェックしてもらいたい。

[出演作]映画「紀子の食卓」
[CM]フコク生命、セガサミー、アデランス、カルビーポテトチップスなど
[ラジオCM]株 コマツ トウイングトラクター

指宿豪

敵役側にいながら窮地に陥るサジキたちを自らの信念に従って救おうとする心優しき香具師・須藤を演じる。

元ボクサーであり、かつては暴走族の初代総長を務めるなど"荒ぶる男社会"に順ずる武勇経歴の持ち主でもある。 ホラーでありながら往年のヤクザ映画を目指した本作品において、やはり本物に近い感性を持つ役者に協力してもらいたいと考えた監督の呼びかけに応え、出演が決まる。 物語ラストで須藤が切る仁義こそ、この指宿豪の真骨頂であり、監督がもっとも好むシーンの一つとなっている。

「ミナミの帝王」シリーズの荻庭貞明監督に薫陶を受けた後、数々の名作Vシネマ、TV、舞台と活動を残し、近年は劇団EVE COMPANYを主宰、脚本・演出家としても活躍の場を広げている。

水沢彩

森の奥深くに徘徊し、侵入する者を冷酷に惨殺する少女人形"箱入り娘"を演じる。

元グラビア・タレントであり数多くのビジュアル媒体に出演、コカ・コーラ、レオパレスなどのCMでも大いに注目を集めた。 手足の長い美しいルックス、均整のとれたスタイル、大きな猫っぽい目が印象的である。

本企画は、この「水沢彩の出演するスプラッター作品」という企画案から立ち上がったもので、彼女が演じた"無表情で残酷な少女人形"というキャラクターは、彼女の持つルックスを最大に生かしたものとなっており、まさに水沢=箱入り娘というものになっている。

残念ながら現在はタレント活動を休止しているが、彼女には根強いファンも多く、今も復帰を心待ちにする声は少なくない。

書道師範代の免状を持つ多才な人物である。

TORICO

サブロウタ操るもう一体の少女人形"傀儡娘(くぐつむすめ)"を演じる。

2004年に短編映画「ミガカガミ」にて監督デビュー。 7カ国11箇所の映画祭に正式招待。 国内映画祭にて準グランプリ受賞。続く初の劇場長編「イケルシニバナ」も、7カ国の海外映画祭で高い評価を得る。

少女人形というモチーフに対する造詣は深く、その独特の世界観を追求した作品を生み出す アーティストである。 彼女の近寄りがたくもあるクールビューティさは、自身が表現する "人形美"そのものであり、作品世界で非現実を表現するための稀有なアイコンとして彼女に 出演を希望する監督、作家たちは多い。 現在も映画監督として活動する傍ら、写真集、美術作品 とのコラボを飾るなど様々な作品へと出演が続いている。
只今新作映画企画中。

[出演作]
衛星劇場30周年記念作品ムラタ式幻影回路(山口洋輝監督)
2005年「そうかもしれない」保阪延彦監督
2006年「ベロニカは死ぬ事にした」堀江慶監督
2011年「古潤茶」ブラインド(御茶漬海苔監督)
監督作品 ミガカガミ、イケルシニバナ

上條信明

森の中で惨殺される香具師の弟分を演じる。

監督とは旧知の知り合いであり、ただいるだけで何かがおかしいと評される存在は「役者ではなく、もはや妖怪」(監督談)。 大和克巳同様、近藤作品には欠くことが出来ない彼だが、先ごろこっそりと役者廃業を表明。 それもまた彼独特の戯言として、誰からも真剣に受け止められていないことに気づいてはいないようである。

骨川道夫

森の中でサジキの命を狙うも失敗、自ら命を絶つ香具師の兄貴分を演じる。

以前に行われたオーディションで、亡き三島由紀夫に似ているという理由で監督の印象に深く残り、3年の月日を経て今回の出演オファーとなった。 硬派な見た目でありながら、繊細な感性の読書家であり、類まれな文才の持ち主として脚本家としても活動している。

壮絶な自死を遂げる彼の演技は、本作品のテーマでもある仁義を象徴する必見のシーンとなった。

[脚本]
Voyage〜光の射す方へ(シアターサンモール)
愛と羊羹(Twitter×USTREAM連動ドラマ)

ミック入来
サジキたちを森の入り口で待ち受けるアイパッチ姿の香具師を演じる。
ミュージシャン、タレントとしてその奇抜なパフォーマンスは見る者に衝撃を与え続けている。
決して流行にのせられたものではない、彼のエネルギッシュで孤高のスタイルこそ真の芸能人だと言えるだろう。 ストリート、メディア、ライブハウス、打ち上げ、どこにいても"ミック入来"であることが驚きである。
現在は野菜をテーマにしたナンバーを製作し、ボランティアで施設などへの慰問活動も行っている。
[楽曲] ゴーゴーゴーヤチャンプルー、トマトの歌、野菜が好き
朱雀の萩
縣の側近として、呪術を駆使してサジキたちを葬ろうとする怪しげな老香具師を演じる。
本作品が俳優としての初出演となる。当初はエキストラとしての参加だったが、そのインパクトある存在に急遽台詞のある役を任されることとなった。 煙の中に立つ黒衣の長髪姿は、本作品のテーマの一つである呪術をイメージさせるに相応しいキャラとなっている。
道祖土正晴
縣を守る巨漢の香具師を演じる。
本作で役者として本格的な映画出演を果たしたが、道祖土自身もアクション映画の監督であり近年、邦画では実現が難しくなっているカースタントを盛り込んだ「アウトロウ」を制作し、好評を博している。
本作品では役者以外にも銃効果を担当。
銃の構え方、発砲数にまでこだわるなかなかのうるさ型である。
[監督作] アウトロウ

1970年生まれ。

関西学院大に在学中、全関学自主映画製作上映委員会に所属し8ミリ映画制作に携わる。
関東に拠点を移した後、オルスタック・ピクチャーズより2本の作品をDVDリリース。

映像製作者として活動する一方で、2010年には「泉谷しげるコミック展/マンガは爆発だ!!」にて漫画家として参加。原爆と神話をモチーフにした漫画映像詩「太陽/SOL」で泉谷しげる氏とのコラボを果たす。

2012年には乃木坂46デビューシングル収録のPV集において、衛藤美彩・主演の短編映画「暗黒少女」を監督。「呪術」をキーワードに、現実と人間関係への新たな解釈をテーマにした作品作りを目指す。
本作品「昭和極道怪異聞ジンガイラ/仁我狗螺」は、そのテーマの下に描かれる準備企画「BOSS HEAD」の外伝となっている。

[フィルモグラフィ]
短編ホラー「6∵」(2007)マイクロソフト「ゴールデンメッセ劇場」
主演 神園さやか(キングレコード)

短編映画「暗黒少女」(2012)乃木坂46デビューシングル「ぐるぐるカーテン」type‐B収録
主演 衛藤美彩(乃木坂46) 

2012年公開予定作品 「昭和極道怪異聞ジンガイラ/仁我狗螺」